イニシャル費

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縁のない人には全く縁がなく、一般的な言葉でもないかと思いますが、縁のある人には非常に気になり、夜も眠れなくなり胃も痛くなるという言葉。

乱暴に言うと、何らかの品物を生産する際に必要になる金型や版、治具などを製作するのに必要になるお金のことですが、ほとんどの場合が職人の妥協のない仕事が生きる一点ものであり、お値段も時に「冗談でしょ?」という桁に達します。イニシャル費と言うからには初回のみ支払うものである前提ではあるんですが、設計するのが人間である以上どうしても間違いが介在し、イニシャル費を複数支払うという事が多々発生するわけです。

イニシャル費と言っても何を生産するか、どの程度の規模であるか、仕様によってお値段はピンキリであり、全く持って一概には言えないんですが、私の経験上での痛さでは次のようになるかなぁと。

一番かわいいところでは取説やパッケージの箱などの印刷物の版代で数万?数十万程度。ちょっとかわいくないところでは、プリント基板(電子部品がたくさん乗っている緑色の板)の版代で数十万からン十万くらい。笑ってられなくなってくるのがプログラムやデータを書き込むマスクROMのマスク代がン十万程度。痛くなってくるのは機構関係のカスタム部品(製品の形に合わせたスイッチとかそういう類)でン十万から百万くらい。ほぼ確実に痛いのが樹脂成形金型で、大きさや形状により差が激しいですが数十万からン百万。間違っても間違いたくない級の激痛必至なのがASIC(特定用途に特化したカスタムIC)等の半導体系の設計費、マスク代で数百万から数千万(規模によってはさらにその上のケタに)。

それなりの金額になってくるとそれなりの職責の方々にスタンプラリーを実施して得られたお金であったりするわけで、そう言う意味でも痛さが倍に。もちろん遅れを取り戻すために要する時間も相当なダメージに。

まぁ、なんで唐突にそんなことを言っているかというと、「そういう事態が発生していたく反省した」とかそんな感じだったからだったりするわけですが、そうは言っても、製品として出荷される前に間違えに気付いたというのは幸運だったとも言えますし。イイじゃないか、イイじゃないか、と。

電気製品を作ることを日々の糧というか、趣味の延長にしている当方ですが、趣味と一線を画すのもイニシャル費という存在なのかなぁとつくづく思います。多額のイニシャル費を再び払わなければならない間違いに気付いた瞬間の「あ゛っ!!」という感覚。これぞ趣味では味わえない醍醐味ですね。(誤)



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